めめんともり!
これは遺書だ!!!!!!
ドアノブに縛ってあるのは、GUで買ったルームウェアを縛ってあった紐。
大丈夫、大丈夫。きっと大丈夫。
猫がベッドに入っているイラストの睡眠剤も飲んだのだから。
紐を首にかける。
見つめた床には埃が佇んでいた。
年末までには掃除をしないとな。
死ぬべき何かがあったわけではない。
仕事は順調、実家暮らしで金には困っていない。
ただ、常に「お前みたいな役立たず死んでしまえ」の声が脳内でリフレインする。
だから「いつか死ぬべきなんだろうな」と思っていた。
卒業とともに友達はみんな去った。
気になる子に声をかけられない。
それどころか人とうまく話せない。
趣味がない。
今はゲームはおろかアニメやドラマを見る気力もない。
部屋で育てている紅葉も薔薇も枯れてしまった。
人と話すのが苦手でいつも周りに気を使わせてしまう。
きっと死ぬべきなのだろう。
それはある日急に来た。
行動力がみなぎり、「チャンスだ」と感じるタイミング。
自殺チャンスである。
理想の死に方は拳銃自殺だった。
だが、手元に拳銃はないので妥協で首吊りを選んだ。
鶴見済氏が絶賛していたのだから間違いない。
朝起きたら、ベッドの上だった。
鏡で綺麗なままの首を見る。
夢だったのかもしれないと思った。
ただ同時に、首を括る僕の眉間に皺を寄せた顔が頭を過る。
記憶が朧気だが、おそらく失敗したのだろう。
ドアノブと僕を結ぶ紐は世界と僕を繋ぐ未練のメタファーである。
顔を洗い身支度を整える。
今日の仕事は早番だ。
窓の外の空は恩着せがましいほど澄んだ青空だった。
かくして首を吊ることができなかった僕は僕をしたためることにした。
次のチャンスに備えて。